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【レビュー】アーキタイプ・アーカディア【評価】ダークテイストで彩られた、大ボリュームな王道ファンタジーADV!

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本記事が新年最初の感想記事になります。今年も感想記事を頑張って書いていくぞ!


さて、今回は「アーキタイプ・アーカディア」の感想記事を。ぼくがプレイしたのはSwitchのダウンロード版です。

プレイ時間は全エンディングまでコンプリートして、40時間ほど。詳しくは後述しますが、かなりの大ボリュームでした。

ウォーターフェニックス×ケムコ製作ADVの第二弾

本作「アーキタイプ・アーカディア」は2018年に発売された「最悪なる災厄人間に捧ぐ(以下さささぐ」に引き続く、ウォーターフェニックス×ケムコによるADV第二弾となります。


近年のケムコはADVゲーム展開に力を入れている印象で、本作もその流れを汲んで、さささぐから引き続いたという感じでしょうか。(amphibian氏が退職してしまったので、今後どうなるかは分かりませんが。)


ちなみに、初出の情報からは結構発売まで長かった印象。確か2019年の9月には既に仮称が出ていたような気がしますね。


前作さささぐは強烈な鬱ゲーとしてインパクトのある作品だったので、個人的には元々注目してたんですが、実際クリアしてみると、さささぐとはまた違ったダークなテイストと、大ボリュームな内容、印象的なキャラクター描写が心に残った作品でした!

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【レビュー】最悪なる災厄人間に捧ぐ【感想】悲しく、辛いけれど、救いある二人の物語 - 炎に煌めくゲームレビュー

 

仮想ファンタジー世界をテーマにしたADV

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まず、本作の内容なのですが、ケムコのADV系列としてはやや異色な、ファンタジー世界をテーマとしたADVとなっています。

ファンタジーと言っても、舞台はVRゲームの中という設定で、厳密なファンタジーとはまた若干異なりはするのですが。

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舞台が現代から離れたこともあって、今までの作品には無かった戦闘の描写や、各地を冒険していく旅感などどちらかというとRPGに近い描写が目立っていました。


基本的に現代がテーマなケムコのADVゲームの中だと、割と異色な作風だったかなという印象ですね。


そんな本作のポイントをガッツリ下記で紹介していきます!

特徴的なRPG的表現

前述した通り、本作はファンタジー世界のVRゲームの中が、メインの舞台になることもあって、RPG的な要素を多く持っていました。

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例えば、戦闘描写。アバターというパートナーを操作して戦うという、ケムコ発売のADVとしては中々風変わりな要素があったりします。


この戦闘、描写が結構頑張っていたかなと。

例えば体力が減ったら画面が赤色で埋まっていく、ということで表現的にもイメージしやすいようにしていたし、少ない絵の枚数ながらも、ちびキャラを派手に動き回らせることで、上手く文章とリンクした演出を描けていたかなという印象です。

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また、ワールドマップの概念も面白かったです。


アーキタイプ・アーカディアの世界は、いくつものエリアに分かれていて、それぞれ統治しているボスが存在していたりするんですよ。


序盤に設定が説明されるんですが、この勢力と物語中、どういう流れでぶつかっていくのかなあと想像するのが楽しかったです。


アドベンチャーゲームでRPG的な表現が見れるなんて!?

王道なストーリー

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ストーリーはですね、とにかく王道でした!

後述しますが、勿論ケムコのADV系列だけあって、ダークなテイストは存分に含んではいます。なんですが、それ以上にとにかく王道的な要素そろい踏みなんですよ。

たまたまゲームにログインした主人公が、世界を救う冒険へ

旅先で集まっていく仲間たち

多くの人々との出会いや決別

物語の中で成長、変化していく者達 ...etc


という感じで、さながら王道RPGのようなポイントを抑えていました。


個人的にはもう少し暗めな感じの内容で身構えていたので、最後までまっすぐな物語だったことにはやや意外性を感じつつも、これはこれで大好物!

特に仲間の集う終盤の展開は非常に熱くて印象的でした。

不安感を煽るダークな演出

その一方で、さすがにこのタッグらしくダークな描写も健在!


例えば、自他ともに対する攻撃衝動を覚える恐ろしい病気「原罪病」や、ゲーム内で戦うために使用するカードを破壊されると、実際の記憶が消滅する、といったえぐい設定が序盤から出てきます。

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戦闘を通して感じられる不安感も独特でした。

相手するモンスターのデザインは、非常に悪趣味でSAN値下がりそうな感じでしたし、ダメージを受けるたびに赤く染まっていく演出も非常に痛々しかった。


何より負けると記憶が消える設定が怖くて、常に恐怖と緊張感がある内容になっていたんじゃないかと。

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その他、暴力的シーン、グロ描写など、過激な描写が至る所に散見されるため、総じてダークなテイストは多めだったと言えるでしょう。


ただし、前述通りストーリーの流れ自体は暗い一辺倒ではないので、記事名通り、王道な内容をダークなテイストで彩った、という表現が一番正しいのかなと。

個人的な印象だと、さささぐほどきつくは感じませんでした。


さささぐがきつすぎるので、感覚麻痺してるかもだけど...。

作り込まれた設定

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本作、設定面に関してもよく作り込まれていた印象です。


序盤から先々の展開を予感させる伏線描写が豊富で、本編内で丁寧にその要素が回収されますし、戦闘含めた物語の進め方もかなりロジカルな印象でした。

こうだから、こういう理由でこうなる、というのがしっかり片づいており、モヤモヤすることが少なく、スッキリと読み進められるのは良かった。


さささぐはどちらかというと、雰囲気重視でふわっとした設定だったので、少し意外に感じましたが、こういうテイストもしっかり作れるんだなと。

選択肢シーンはやや増加

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本作、過去のケムコADVと同様、選択肢を選ぶシーンがありますが、さささぐに比べて、やや選択肢を選ぶシーンは多かったのかなと。


基本的には誤ったほうを選ぶと、バッドエンドにいくだけですが、中には、いくつもの選択肢を連続で選ばないといけないバットエンド、なんてのもあったりしていて、多少工夫を感じました。バッドエンドの種類も20と中々多め。


ただ、フローチャート的な物はなく、遊ぶ要素としては物足りず。あくまで読む方に重きを置いているのは変わりませんでした。

圧倒的な大ボリューム

本作、ボリュームは凄かったです。


本編+6キャラ分のエンディングをコンプリートした時のプレイ時間は40時間と、ADVとは思えないレベルの長さでした。


今までプレイしてきた、過去のケムコADVはレイジングループの25時間が最高だったんですが、本作が大きく更新してきました。


それもそのはずで、なんと本作のテキスト量は120万字にも上るみたいです、

引用 https://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1359790.html


120万字と言ったら通常の文庫本10冊の量ですからね。凄い量です。


後述するように、長いゆえに気になったこともありましたが、その分キャラクターの描写や世界観設定はかなり濃く描かれていたので、とても良かったのかなと感じました。

魅力的なキャラクター描写

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キャラクターはかなり魅力的でした!


前作のさささぐが最後まで2人の物語だったことと対照的に、今作は数多くのキャラクターたちによる、重厚な関係性が描かれていました。


旅の中で時に仲間になったり、時に裏切られたり、その中で戦ったり、再度また仲間になったりと、豊富なドラマの中で、丁寧にキャラクターを描写しているので、感情移入しやすかったです。


時々、他キャラクター視点での描写が入るのもgood!

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後は、キャラクターの個性付けが良かったかな。


例えば主人公のルストはいかにもって感じの心優しい王道系主人公なんですが、割り切りはいいタイプで、単なるいい子ちゃんで終わっていないのが良かったなと。


そんな感じで結構一癖も二癖もあるキャラばかりで印象に残りました。

ファンタジックな曲調が新鮮な音楽

音楽面に関しても触れさせてください。


本作の音楽はケムコADVではお馴染みの乃々都さんが担当されているのですが、作風に合わせてファンタジックな曲が多いんですよね。


それでいて氏の得意とする、サスペンス系の雰囲気も混ざっていて、これまでとは一風違う、新しい雰囲気に感じられました。


また、演出面も素晴らしかった。本作、歌付きの主題歌である、「Reminiscence」をいくつかのイベントシーンで使用しているのですが、いずれも最高にシーンとあっていて、惹き込まれました。


特に物語終盤のインスト版の使い方は涙腺に来たなあ。


この曲、凄く気に入ったので2月発売のサントラも買おうかなと思ってます。

気になった点

中だるみする過去回想シーン

前述した通り、本作は過去のケムコADVゲームの中でも、最大級のボリュームを誇っているのですが、残念ながら長すぎる故に中だるみしているポイントも存在していました。

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個人的に特に気になったのは過去の回想シーンかな。


設定の関係上、多くのキャラクターの過去回想シーンが度々差し込まれるんですが、このシーン、演出がモノクロチックで動きが少ないので、地味なんですよね。


それでいて、きっちりキャラを掘り下げようとしている故か内容がかなり長いので、結構退屈に感じてしまった。


勿論、キャラ描写では大事な部分なんですけど、だったらもう少し見せ方を工夫して欲しかったですねえ。


まあ、クリア後に見れる設定資料を見る限り、元々は更に長かった部分もあったようなので、おそらく開発側もそこには気づいていたようですが。

フリーズバグがある

これは、SwitchのDL版だけかもしれませんが、フリーズバグがあります。しかも結構発生頻度が高かった。


細かい条件はわかりませんが、バックログに関連してるのかな?


本作、バックログを開こうとする際にロードを一瞬挟んでいるようなのですが、そのタイミング次第で、右下のLOADINGが消えずに、画面が固まる事象が結構な回数発生しました。(5回くらいかな?)


本作、オートセーブの頻度もいまいちで、上記フリーズが発生すると、場所によってはかなり前まで戻されてしまうこともあって、中々困りました。

アップデータでも改善されないし、うーんという感じ。

強烈なオリジナルティには欠ける

本作、全体的にはADVとして質は高い作品だと思います。ただ、過去のケムコADVと比較すると、やや癖が弱いかも。


暗い描写も多いけど、さささぐほど強烈な鬱ゲーというわけでもない、伏線描写も悪くないけど、amphibian系列と見比べると、どうしても見劣りを感じてしまう、という感じ。


世界観的な雰囲気や大ボリュームなのは特徴的ではあるんですけどね。


テキスト面での方向性でいうと、ややインパクトに欠けるのは否めません。

まあこれに関しては他が強烈すぎるので、仕方ない所があるかもしれない..w。

まとめ

と、こんな感じでした。


さささぐに引き続いて、基本的には読むADVでしたが、少ない枚数をうまく動かして演出していたり、ダークなテイストを王道の引き上げに使っていたり、前作とはまた違う、挑戦的な姿勢を感じられたので良かったのではないかと。


過去作品ほど、単体の強烈さがあるわけではないんですが、作品を思い返したときの思い出の多さに関しては、ボリュームも相まってケムコADVシリーズ最高峰だった印象です。

クリア後はしばらく設定資料を見漁ってました。


価格に対して、分量も多くコスパも高め


ダークさも前作ほどではなく、王道な物語を楽しめると思うので、ケムコのADVが気になっている方は本作から遊んでみても良いかもしれません。


今作も面白かったという事で、次のケムコのADVシリーズはどうなるのか気になっています。

とりあえず、ウォーターフェニックスとのコンビ作品は続けて欲しいですねえ。