どうも、ば~んです。
今回は「イハナシの魔女」の感想記事です。
プレイ時間は10時間ちょっと。一本道のアドベンチャーゲームなので、ボリューム自体は控え目。同人ゲームかつ、3000円以下の作品なので、内容的には妥当かと。むしろ、プレイ時間の割に、かなり内容が詰まっているので満足感は高い印象です。
後、Switch版は色々な設定資料が見れるエクストラモードと、本編の後日談的な小説モードが用意されているので、ちょっとお得感があるかも。
PCの同人ゲームのコンシューマー移植版
本作はケムコによってコンシューマー機に移植展開された作品ですが、元々としては「Fragaria」という同人サークルによって製作された同人ゲームになります。
評価の高い作品だったようですので、ケムコ的にもアドベンチャーシリーズの展開の一環として移植を名乗り出たような形なのかなと。最近めっきり新作出ないけど。
そんな形なので、ケムコアドベンチャーおなじみの安定のUIデザインとバックログ機能、オート読み飛ばし機能で快適に遊べる仕上がり。ぼくもケムコのアドベンチャーシリーズを久しぶりに見ていたら本作を見つけたという形だったので、助かる移植でした。
後、本作の特徴的な所は、同人ゲームにも関わらず、主人公以外の主要キャラクターが全てフルボイスである所。おかげでそこまで硬派な印象もなく、サクサク読み進められるので、見た目以上に取っつきは良かったです。
ボイスの有無は、昨今のノベルゲームでは大きいからなあ。
沖縄を舞台に繰り広げられる青春セカイ系のストーリー
そんな本作ですが、内容的には沖縄の離島を舞台に繰り広げられるボーイミーツガール+セカイ系*1、という感じの作風。
離島で生きる、という所から始まり、色々なキャラクターとの交流を経て、やがて事の真相が明らかになっていくという流れ自体や、
魔法を使ったファンタジー的な要素は王道的な作りなんですが、肝となっている部分は土地の慣習的なテーマという、一風変わった組み合わせは中々独特。序盤から終盤の展開はまるで予想できないくらい話が広がる一方で、テーマ性は一貫しているという所からもかなりしっかり練られて作られたのが伝わってきました。
各キャラクターに絞って章が用意されていますが、それぞれ章の雰囲気も違うし、先への伏線出しも丁寧なので、テンポよく読み進められるのも魅力の一つです。
先への興味を惹く絶妙な物語構成
そんな本作のストーリーの良さとして、まず一つ上げられるのが構成の部分。前述したとおり、章立てなんですが、章のラストの幕引きがうまいです。上手く、その章で語り切られなかった部分を伏線出ししてくるので、先が気になるんですよ。
特に、序盤は「生活」を軸とした日常的なシーンを中心に物語が展開されていくので、その中で非日常的な要素がホラーにも近い形で挿入されるシーンはとてもギャップがあり、ドキドキもしたし、とても興味を惹かれました。
一方で、日常パートのストーリー自体も中々出来が良く。キャラクターが生きていく中で抱えていく悩みや苦難、自分がどうしたいのか、という所に向き合っていく内容は、見ごたえがありました。
最終的に小出しにされた伏線が丁寧に回収されるのはとてもスッキリしたし、終盤はギリギリの所までためた分、展開のカタルシスも凄かったので、盛り上がり所の作り方も丁寧だったかなと。総じて、コンパクトなわりに構成が絶妙で、満足感は高かった。
終盤のあの盛り上がりは、まさにセカイ系!
キャラクターに魅力を感じられるストーリー構成
キャラクターの見せ方の良さも本作のストーリーも魅力の一つで、とにかく章立てごとの役割が丁寧です。
章ごとにキーとなる人物に焦点を当てて進んでいくんですが、それ以外のキャラクターにもきちんと魅力を感じられるように、それぞれ見せ場が用意されているので、愛着が持てるんですよ。
立ち絵が用意されているメインキャラクター以外にも味がある人物が多く、妙に印象残るのも含めて無駄がありません。
みんなの迷いや悩みを解決して、だんだんと人間関係を構築していった中で、最後全員が主人公とヒロインに協力してくれる展開は王道ながら心に響くところがありました。
個人的にはヒロインのリルゥがすごい良かったなって。所謂クーデレ系タイプのヒロインだと思うんですけど、物事の見方が達観していて、いい意味で浮いている。でも、その考え方にはちゃんと理由があるという。
主人公の設定との組み合わせがすごい噛み合っていて、幸せになってほしいなって感じだったので、後日談を見てニヤニヤできる点は素晴らしい!
細かい設定面の作りこみが深い
後は設定の作りこみ。これがすごい!
まず、単に舞台設定から広げた所。沖縄の離島をモチーフにしているので、それに因んで「ニライカナイ」や、琉球神道の「祝女(ノロ)」から広げた設定が物語の軸になっていますがが、かなりよく練られています。
土地固有の文化の不気味さと、神秘さ。田舎の離島だからこそ、成立しえる信仰といったストーリー要素を実際の文化と絡めて、説得力のある形にしていたのはお見事だったのかなと。
後、それに加えて面白いのがファンタジー世界の要素です。本作、上記のように閉鎖的な慣習文化を軸にしている一方で、タイトルに魔女とついている通り、創作物らしいファンタジー要素がそれに深く結びついてくるような設定を採用しているんですよ。
一方をリアルに描きつつ、一方で非現実的な描写を入れるギャップがうまく物語としての独自的な雰囲気を演出していて、良いなと感じられました。最終的な物語の着地点としても、この二つの要素、うまくまとめ切ったのではないかと。
固有の風習文化と異世界要素を組み合わせるとは!?
充実したエクストラモード
本作、クリア後にエクストラモードが解放されるのですが、これも見ごたえ抜群。製作の裏話的な要素が見れるのも面白いんですが、何より設定の全貌がきちんと明らかになるようにしてくれているので、クリア後にスッキリできます。
ここを見ると、時代や舞台の背景とか、過去の歴史の話だとか、設定が広いんですよね。作りこみが深いので、自分で整理して考えるのも楽しかった。
後は、コンシューマー機版は、コミケで配布された本編の後日談を描いた小説が収録されているのもポイントですね。いずれも短いし、ノーボイスではあるんですが、エンディングのその後が垣間見えてちょっと微笑ましく、いい要素だなと感じました。
気になった点
気になった点としては、これはもう同人ゲーム的な問題なので仕方ないですが、やはりキャラクターの立ち絵やCGが相当少ないです。何ならメインキャラクター6人以外は立ち絵すらない始末。
それでもフルボイスなので、他のゲームに比べれば頑張っているとは思うんですが、エクストラモードの設定集などを見ると、他のキャラクターの立ち絵とかも見てみたかったなと思いました。
後は、シナリオのギャグシーンの癖がちょっと強いですかね。特に前半部分。ちょっと下ネタがくどかったり、微妙に滑ってる演出が多かったり。まあここのギャグも、この後の展開にギャップに聞いてくる所はあったので、それを踏まえると実は悪くない気もするのですが笑。
まとめ
以上、感想でした。移植から1年以上たって、ちょっと時間があったので、ふと思い立って購入してみたのですが、いやはや大当たり!ケムコ、いいタイトルを移植に選んだなと。
全体的にコンパクトながら、セカイ系の良さをぎっしり詰め込んで、かつ設定面もこまかく丁寧に作りこまれていたので、読み応え抜群でした。終盤の物語展開なんて圧巻でしたよ!
サクッと読み切れる割に、重厚な物語体験が楽しめるので、古き良きセカイ系ノベルゲームを遊びたい方や、王道のボーイミーツガールを遊びたい方はぜひ!
*1:主人公とヒロインの関係性が、世界の規模の問題に繋がる。世界かヒロインのどちらかを取るか、みたいな物語の定義。