どうも、ば~んです。

今回は「ハッピールートを終わらせて」の感想記事です。
プレイ時間は23時間弱。内容自体が一本道気味で派生要素も少ないため、プレイスタイルによる時間の変動はあまりなさそうです。前作、前々作との比較で言うと、超大作だったアーキタイプ・アーカディアはさすがに別格として、さささぐよりも若干短めに感じる程度のボリューム感でした。
ウォーターフェニックス×ケムコ製作ADVの第三弾
本作は2018年発売の最悪なる災厄人間に捧ぐ、2021年に発売のアーキタイプ・アーカディアに続く、ウォーターフェニックス×ケムコのADV第三弾という位置づけになるのかなと思います。(厳密には、「一緒に行きましょう逝きましょう生きましょう」のリメイクがあったので第四弾?)
鬱表現と暗い作風を何よりを得意にしているこのチームが選んだ今作の題材は学園もの。それもただの学園ものではなくて、「アドベンチャーゲームであること」を作中の人物が認識しているという、かなり変わり種な設定です。

作中の主人公は、選択肢というシステムに縛られて生きているんですが、何者かの介入によって、悪意のある選択肢しか存在ない世界という状態になってしまいます。そこからプレイヤーと協力して本来の世界を取り戻していく、というのが大まかな流れ。
という感じで、設定自体は少し変わっている者の、テイストはいつも通りの鬱ゲーだったかと!読後感はそこまで重くはなかったものの、ある一点において非常に秀逸と感じる点があったので、以下で解説していきます。
非常にレベルの高い不穏感の演出
本作、まず良いと思ったのが、とにかく全編にわたって不穏感を演出できている所です。遊んでいて感じる、妙な気持ち悪さが漂っているんですよ。

その理由の一つが、UIデザインが「赤色」基調で統一されていること。赤の上に薄い靄がかかったようなデザインがどうにも落ち着かず、遊び始めた段階でピリッとした緊張感を感じました。

そして、その気持ち悪さをそのままゲームシステムに落とし込んでいるのが「偽選択肢」。アドベンチャーゲームの定番である選択肢システムに対して、本来の選択肢が封印された状態となり、悪意のある選択しか選べない状況になってしまっているんです。ここの演出も中々ホラーチックで、俗にいう「ブラクラ」演出に近しい形。

これを選んでしまうと、主人公や周りのキャラクターの思考が汚染状態となり、どんどん間違った、悲惨な世界に進んでしまいます。この汚染の演出も独特で、なんとキャラクターが白い影のような絵で表現されます。
と、こんな感じでとことんまで「間違った世界」を演出していて、それがプレイヤーへの不快感に繋がっているように感じました。通常であればマイナスの評価点にもなりそうですが、本作の場合は作成と併せて意図的に演出できていますし、それが伏線としても作用しているので、上手いなと感じました。
この手のホラー演出は、ウォーターフェニックスの十八番!
上手く作りこまれたメタ設定
本作、公式サイトにもある通り、メタ設定をジャンルに含めているということで、主人公がプレイヤーのことを認識したり、アドベンチャーゲーム特有のフローチャートを認識したりと、アドベンチャーゲームならではのメタ要素が随所に盛り込まれています。

とはいっても、昨今だとそのような演出は割とありふれているので、新鮮味としては正直さほどではない。なので、序盤は「上手く独自性を出せるのかな?」という視点で読み進めていました。
ただ、最後まで読み切った後の感想としては、「要素の使い方がとても上手かった」の一言に尽きます。

まず、アドベンチャーゲーム要素を逆手に取った演出が上手かった。アドベンチャーゲームって、フローチャートだったり、各ルートだったり、そういう要素が自然とあると思うんですが、本作はその要素を物語に直接組み込んでいるんですよ。
だから、フローチャートで絶望感を演出してきたり、主人公が「この世界を捨て回だ」と認識したりと、普通のアドベンチャーゲームだとあまり見れない演出が見れるのが面白かった。
そして、このメタ要素自体が伏線として機能しているのがお見事!ネタバレになってしまうので詳細は触れませんが、終盤のある展開は「そう来たか!」と思わず唸ってしまうオチで、この作風ならではに感じました。本作、終盤の落とし方については、過去のウォーターフェニックスの作品でも、一番うまく畳んだ感があります。
終盤の怒涛の伏線改修には驚かされた!
これまでの作品の要素を継承したストーリーライン
本作、基本的には各ヒロインごとのルートが章になっているような形式です。登場キャラクターの数はアーキタイプ・アーカディアよりは少なく、さささぐよりは多め、というバランス。
でも、今回も印象に残るキャラクターが多かったです。過去作を遊んできたからこそ、各作品の要素を少しずつ継承しているようにも感じました。

個人的なお気に入りの章は3章。開幕から、前章と全く違った雰囲気で始まるので、ギャップとしてパンチも聞いていたし、何より今を精一杯生きる、というテーマがさささぐに似たテイストを感じて少し懐かしくも感じました。この章が一番これまでのウォーターフェニックスらしさが出ていましたかね。

キャラクターとしてはメインヒロインの亜由乃が強かった。彼女のキャラクター性は本作における納得感に繋がっていたので、かなり深い所までキャラクター像を作りこんだ印象です。俗にいう強きヒロインなんだけど、ちゃんとそれに理由があって、彼女視点から物語を見れるところもあったので感情移入出来るし、いいヒロインでしたね。
気になった点
中盤からトーンダウンする展開
本作、前述したとおり序盤はパンチがあっていい展開だと感じましたし、終盤の伏線回収も見事に感じたのですが、一方で中盤は話の作りに少し詰まったのかな?という所を感じてしまいました。

具体的に言ってしまうと、中盤あるシーン以降は偽選択肢がほぼ発生しなくなるんですが、ここからの展開がどうもいまいちというか、必要な情報にための過程が長すぎるというか。キャラクターの深堀によって出ている魅力はあると思うんですが、そこが本筋ではないよなあ、という部分の尺が妙に長く、退屈に感じてしまいました。
後は絶望感的な意味でも序盤が山だった感が強く、ちょっと拍子抜けな感覚もありました。いや、十分重いんですけど、やっぱりテイスト似通っているさささぐが強烈すぎるのかな。あの作品と比べるとちょっとパンチ不足感は否めません。
プレイヤーに「遊ばせる」意識の足りないメタシステム
システム周りも気になる所がありました。それは一本道過ぎてプレイヤーの意志が介入する要素が少なすぎる点です。
いや、アドベンチャーゲームとしてはそれでいいと思う所もあるのですが、本作はせっかくのメタ表現を用いたアドベンチャーゲームなわけです。で、あれば、もう少しプレイヤーに遊ばせる要素を入れても良かったのではないか?と感じました。例えば、展開をやり直す場合は、ゲーム側で勝手に切り替わるようにするんじゃなくて、プレイヤーに操作を委ねて答えを探させるようにするとか。
そういうプレイヤーの意志が介する要素がほぼないので、プレイヤーが物語に関わる、というゲームのストーリーへの没入感が正直薄く感じてしまった所です。ここら辺は他社のゲームだと、アノニマスコードとかが良く出来ていましたね。ああいう仕掛けがあったら、より面白かっただろうなとは思いました。
まとめ
以上、感想まとめでした。
総合的に見ると、個人的にはさささぐ、アーキタイプ・アーカディアには一歩及ばなかったなという印象。だけど、クリアした時の感触は悪くなく、一作品としてはしっかりまとまっていたなという感覚です。それくらい、ラストの畳み方が綺麗だった。
しかし、ウォーターフェニックスの製作するゲームは着眼点が面白いなと。ユニークな仕掛けを毎作提供してくれるので、次回作が遊びたくなるんですよ。ぼくは鬱ゲー自体はそこまで得意ではないんですが、この会社の作品は鬱の先まで描いてくれるので、そこも良いなと思っています。
とにかく、アドベンチャーゲーム自体を逆手に取ったテーマは斬新で、価格に対してそれなりの内容ではあると思うので、情報を見て気になった方であれば楽しめるのでは、と思いました。
