どうも、ば~んです。
今回は「シロナガス島への帰還」の感想記事です。
プレイ時間は15時間弱。本編だと10時間ちょっと、そこからエクストラシナリオまで見て15時間、という感じかな。
ネットでのプレイ時間はもう少し短めに紹介されているので、ボイスを全て聞き切った上での時間と考えて頂ければと。
- 2018年に発売された同人ゲームの移植作品
- 低価格ながらも本格的なミステリーが楽しめる!
- ガチでビビらせてくるホラー演出
- 伏線描写が丁寧なストーリー
- 個性的で印象に残るキャラクター
- 丁寧な音の作り
- 気になった点
- まとめ
2018年に発売された同人ゲームの移植作品
本作は2018年にPCで発売された「シロナガス島への帰還」の移植作品です。
元々は500円の個人製作の同人ゲームなんですが、非常に高い評価を受けている作品で、2021年にはクラウドファンディングによってNintendo Switchへの移植とフルボイス版の制作が決定していたんですよね。
それで発売されたのが本作という形になります。オリジナル版からの追加要素は主人公以外のフルボイス化と、主題歌という感じかな。
なお、ゲームジャンルの方ですがオーソドックスなアドベンチャーゲームになります。読み進めていくノベル要素に加えて、選択肢やカーソルを合わせての調査など、ちょっと懐かしい作りでした。
低価格ながらも本格的なミステリーが楽しめる!
そんな本作の最大の魅力は、1000円に満たない低価格(※DL版)ながらも、中々本格的なミステリーが楽しめること!
舞台は絶海の孤島、招かれた9人の客の中で巻き起こる殺人事件、島に纏わる恐ろしい噂、立て続けに巻き起こる異変、という感じで、王道ミステリーの基本に沿ったストーリーが展開されます。
ミステリーのお約束であるクローズドサークルに加えて、ひたすら不気味なロケーションにホラーデザインな化け物と、余裕なく緊張感のあるストーリーが楽しめるような内容です。
値段が値段なだけに、長編ミステリーという感じではないですが、その分無駄がなく、ノンストップで次々と事件が巻き起こるので、中盤からは夢中でプレイしてしまいました。
そしてですね、起こった事件に対しての推理パート。これもしっかりしていたのが好印象です!
ストーリーテイストがホラー寄りなので、だんだんミステリー部分がおざなりにならないかな?と心配だったんですが、
ホラー展開を駆け抜けつつも、しっかり論理的に導き出せて、違和感ない推理を行うことのできるように完結させていたので、とても気持ち良かったです。
まあ、推理編が良くできていると感じるだけに、終盤はやや違う方向性に進んでしまうのはちょっと残念でもありましたが…w。
終盤は、ホラゲーでよくあるやつだ!って感じでしたな。
ガチでビビらせてくるホラー演出
ミステリーとしても面白い本作ですが、割合としてはホラーゲームとしての要素もかなり大きいです。
殺人事件でのゴア表現なんてのは序の口で、中盤以降に出てくる某敵キャラを筆頭に、プレイヤーの不快感、恐怖感を煽るようなカットが満載。絵柄は上画像みたいな感じで、「うまい絵」ではないものの、個人的には逆にそこが怖く感じました。
とりわけ、演出でバン!っていうビックリ系のホラーが多いので、ビックリ系が苦手な方は注意してプレイした方が良いかもしれません。
しかも、単に読み進めるだけというわけではなく、定期的にプレイヤー主導で調べたり、あるいは敵に追われて逃げたりするシーンも挟まれるので、いい意味で緊張感が凄かったです。
まさか同人ゲームでここまで怖いとは思っていなかったので、いい意味でパンチを食らった気分でした。
しかしですね、そんなガチなホラー描写が本編のミステリーにいいスパイスとして機能していて、先に進めるのが怖い一方で、この島にどんな真相が隠されているんだろう?とワクワクしてくる、二律背反な気持ちが味わえました。
割とね、「あっこの後ホラー展開来そうだな」っていう分かりやすい演出が多めなので、もしホラーが苦手な方でも、やばいと思ったら目を細めるとか、イヤホンを片方外したりだとか、そうやって対策しながら遊べるので、そこまで敷居は高くないです。
地下パート怖すぎて、イヤホン片耳外しちゃったよね…。
伏線描写が丁寧なストーリー
ストーリーに関してはですね、前述した通り、ミステリー部分とホラー要素が良かったんですが、それに加えて、伏線描写とその回収が上手い作りになっていました。
全編あまり長くないんですが、序盤からかなり多くの伏線を張り巡らせて、テンポよく物語が進んでいくので、ボリュームの割に物語構造はかなり凝っています。
特にゲーム開始から序盤の空港のシーンまでの伏線描写だったり、それぞれのキャラクターが持っている秘密だったり、後々見返すと「なるほど!」ってストンとうまく落ちるように綺麗に作られているので、読んでいて気持ちよかったです。
タイトルの「シロナガス島への帰還」という言葉の意味が分かった時の衝撃!
個性的で印象に残るキャラクター
本作、キャラクターもかなり個性的で印象に残ります。まず、主人公とその相棒両名が相当癖が強い!
主人公の池田戦は、探偵という設定なんですが、めっちゃ行動力あるし、あんまりビビらないし、肉弾戦も出来るという、全然インテリ系じゃない戦えるおっさんです。罠だとわかっていても突っ込んでいく行動力にはある意味恐ろしさすら感じるほど。
本編でも結構重い雰囲気の中ふざけたりもするので、本編が怖くても彼の言動はある意味頼もしくも感じました。
そしてヒロインの出雲崎ねね子。こちらはこちらで、陰キャコミュ障かつスーパーな知識と記憶力を持っているというパンチ強めな設定。
おそらく、作者の性癖が詰め込まれているんだと思いますが、今回追加された井口裕香氏のボイスもとても合っていて、とても面白いキャラクターに感じられましたよ。
こんな感じでメイン以外にも個性的な面々が揃っています。どのキャラクターにもストーリー中役割が存在するので、シナリオを合わせてうまく作られていた印象でした。
丁寧な音の作り
後はですね、本作音の作りも良かったです。
例えば、音楽面。ストーリーに併せて陰湿だったり、恐怖を煽るような曲が中心なんですが、リアルタイムシーンでは焦るような曲調だったり、盛り上がるシーンは熱い曲調だったりと、使い分けがかなり丁寧でした。
個人的にはタイトル画面の「Return to Shironagasu Island」がめっちゃ好き!
どうやら、本作の音楽は発売後に外注して再作成してもらったという経緯のようなので、同人ゲームの割に本格的な楽曲揃いなのも納得ですね。
音楽以外だと、演出での音の使い方も上手かった。本作のホラー演出が怖いのって、音がかなり本格的なのも大きいと思うんですよね。ビックリ演出に併せて、本格的なSEが飛んでくるので、かなりビビってプレイしてしまいましたよ。
気になった点
フルボイス化に最適化されていない一部ゲーム演出
本作、一番気になったのはフルボイス対応になったのにも関わらず、それに最適化されていないような演出があったことです。
例えばですね、本作一部要素にリアルタイムでの時限要素があるんですが、この時間がおそらくオリジナル版のままの時間設定になっているんですよね。
そうなると、ボイスを聞いて進めるとまず間に合わないわけでして、ボイスをしっかり聞くためには何度も何度もやり直す必要が出てきてしまいます。実際、一部シーンは4、5回やり直しました。
これ、どうなんだろうなあ。個人的にノベルゲームに限らず、ボイスのついている作品はボイスせっかくだし全て聞くのが作品を楽しむ上での礼儀だと思っているので、
ちょっと仕様として受け付けなかったんですが、一般ユーザー的にはそこまで気にならないのかしら。いずれにせよ、わざわざ入れたのであれば、それを活かすような配慮が欲しかったところですが。
使い勝手の悪いバックログ
本作、バックログが非常に使いにくいです。
形式としてはログのような感じでその手前の文章が表示されるんですが、個別ではなくリスト形式なので見にくいですし、ボイスを一回聞き逃したら再再生もできません。
おまけにログのスクロールも使いにくいですし、良い所なしです。
使いにくいのはまだいいとして、ボイスを聞き逃したらどうしようもない仕様はもう少しどうにかしてほしかった。フルボイスなのにもったいないです。こういう所も含めて、なんか移植の質の低さを感じてしまうのが残念。
癖の強いエクストラモード
本作、クリア後に本編のその後を描いたおまけシナリオであるエクストラモードが解禁されるんですが、これがちょっと癖が強い印象を受けました。
というのもですね、ギャグに見えて本編以上にホラーチックな内容になっているんですよ。しかもホラーの趣旨が本編とは違って、理不尽ホラー系なんですよね。
個人的に本編のホラー要素は先が気になるサスペンス的な要素も含めて、怖いながらも楽しめていたんですが、こっちはちょっとただ気分が悪くなるタイプのホラーだったので、正直あまり肌に合いませんでした。
ある種のカオスギャグとして楽しめということなのかもしれませんが、選択肢でたどり着けるバッドエンドに至っては本編の終盤の感動が台無しですしね…。
その後のキャラクターの描写自体は嫌いではないんですが、やりたいことを詰めすぎたのか、中々奇をてらって出来なので、ホラーが苦手な方は本編以上に注意してプレイされた方がいいかと思います。
鏡の話、夜に読むんじゃなかったわ…。
まとめ
以上、感想まとめでした。
フルボイス移植に当たっての問題点をいくつか感じはしたものの、サスペンスホラーとしての質はかなり高く、高評価されているのも納得の出来でした。
Switch版のダウンロード版だと750円でこのクオリティが遊べてしまうのは、かなり破格ですね。ボリューム以外の作り込みは、フルプライスタイトルと比べてもそう劣らないですよ。
同人ゲームらしく、絵やキャラクターに癖があったりする点や、ホラー演出がガチなのでホラー苦手民を敬遠したりする所もありそうですが、
サスペンス系のノベルアドベンチャーゲーム好きな方にはぜひ遊んでみて欲しいタイトルです!