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【レビュー】ユミアのアトリエ ~追憶の錬金術士と幻創の地~【感想】細部に課題は多いものの、オープンワールド軸に姿を変えた新感覚アトリエ

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どうも、ば~んです。


今回は「ユミアのアトリエ ~追憶の錬金術師と幻創の地~」の感想記事です。

プレイ時間は55時間ほど。最終エリア以外は調査率100%までやりました。最終エリアを埋めている最中にモチベが尽きて脱落。サブストーリーの方も中途半端な所で止まってるので、多分やり切れてません。ストーリーだけ追った時の長さはおそらく20~30時間程度だと思います。探索で時間を使った感じで、話自体は短かった印象。

のゲームのポイント!・ライザのアトリエ以来、6年ぶりとなるアトリエ新シリーズ作品。
オープンワールドをゲーム性の中核に取り込んだゲームデザイン。
・道半ばでの力尽きを感じる、細部の粗削りさは相変わらず。

オープンワールドを中核にした、新たなアトリエシリーズ

本作、ライザのアトリエ1作目以来、6年ぶりの新ナンバリングシリーズだったのですが、一番の特徴はオープンワールドをゲームの軸にした所になるのかなと思います。


前作、ライザのアトリエ3も同じく広大なフィールドを歩き回るシステムを採用していたのですが、あれはあくまで作ったシステムを乗っけたという感じで、ゲーム性の軸を絞れてはいなかったのですよね。なので、ちぐはぐ感が否めなかった。


本作は、そこの反省を活かしてか、探索面の方向性でゲームデザインを設計する形に舵を切っていました。具体的な所だと、ゲーム進行に合わせて地域が進んでいくのが大きいですね。そのため、初期アトリエの存在感は歴代でももっとも薄いかもしれません。(フィリスといい勝負。)

下記ではそんな本作の、良い所、悪い所を色々と書き出していこうかと思います。

探索が楽しく感じられるゲーム性

本作、探索要素はそれなりに面白かったと感じていて。そう思った理由は、探索することでのリターンポイントが明確になっているから、かなと。


例えば、探索することでロケーションを見つけると、スキルポイントが手に入る仕組みになっていますし、フィールドに隠された社を修復することで、強化に使えるアイテムを入手できたりするので、探索がそのまま強化に直結しているんですよね。



フィールド内には道しるべ(ファストトラベル先)、遺構、宝物庫、射撃ギミック などなど、とにかく色々な仕掛けが用意されているので、探索の密度もそれなりに高く、探し甲斐のある仕上がりだったのかなと思います。



後、操作性に関しても複数段ジャンプが可能になっているおかげで、高低差のあるフィールドを飛び回るように移動できるのも魅力かなと。前述した射撃ギミックがあったりと、本作の移動面はアクションゲームに近い形に寄っている感覚もありますね。

ダブルジャンプで壁上りできるのが楽しい!

 

オープンワールド軸に改良されたシステム面

個人的な感想ですが、前作、ライザのアトリエ3の大きな不満として、オープンワールドにしたのに、それに付随するシステムの未洗練さ、というのが強くあったのですが、本作はその部分の改良にも取り組んだと感じた所がいくつかありました。



例えばハウジング。前作にもあった、アトリエ建設+キャンプ機能の拡張版だと思うのですが、本作の場合大きいのが、ハウジング拠点に、アトリエと同じ機能を持たせることが可能な点。このシステムのおかげで、都度アトリエに戻ることなく、フィールド内で行動が完結するので、テンポが良かった。(その分アトリエの存在感は薄れてしまってはいますが。)

同じく、アイテムの取得容量が全体的に増えたのもあり、上記の仕様と併せて探索中にこれ以上拾えない、といった事象に遭遇しなかったのは大きなメリット。アトリエに都度戻ることなく、探索続けられるのは体験を損なわない魅力に繋がっていました。

 


フィールド内で行える「簡易調合」についても、これまでであれば、アトリエに都度戻って作っていたであろう、消費アイテムをそのままフィールドで作れるのでテンポ面で優れていたのかなと。



他にも、広大なフィールドを素早く移動できるように、プロセラというバイク的な乗り物が用意されていたり、特定地点をショートカット移動できるジップラインという要素があったり、広大になったフィールドの工夫二関しては、割と改善されていたのではないかと思います。少なくとも本作で移動が面倒に感じたことは、あまりなかった。

よりアクション性が強化された戦闘システム

戦闘は、ライザシリーズをベースにアクション性をより強化した印象。というか、アクションの硬直時間がなく、相手の技範囲を見て回避ガードする、というシステムも完備なので、もうアクションRPGなのかなと。


回避、ガードからのカウンターや一定値弱点を突くと相手がブレイクする、ブレイク時には味方と協力してアイテム攻撃が可能、とライザシリーズの流れを継ぎつつ、アクションRPGっぽいシステムをいくつか追加して仕上げた、感じですかね。



ぼくはコマンド時代の戦闘のほうが好みではあるのですが、これはこれでスピーディーな戦闘展開が楽しめる魅力があるのと、演出的にも見栄えがあるので、それなりには楽しめました。ただ、後述する難易度面の欠点が明確なので、そこがネックではあるのですが。


後、通常戦闘に関してはさほど特徴的なポイントはないですが、ボス戦については、アクションになったならではの、シームレスな演出がいくつか用意されていて、そこは進化を感じました。

これまでと一風変わったストーリー演出

ストーリーに関しては、後述しますが、正直内容はいまいちでした。でも、演出面などにこれまでにない雰囲気は感じられたので、そこは良かったと思っています。


まず、よりRPG的な演出が増えた所。例えば、ボスとの重要なシーンでは力の入ったイベントムービーが展開されたり、落ち込んだ主人公を仲間が励ますシーンだったり。物語の終盤ではこれまでを振り返るようなシーンが入ってきたり。本格RPGの方向に舵を切りたいんだろうな、という意図が伝わってきたので、面白い試みだとは思いました。

もう一点はご都合主義が薄く、ビターな仕上がりな点。本作、パーティーメンバー各員があまり明るい出自でなく、年齢性も高めでその点でも過去作とは一風違うのですが、特に意外性があったのが主人公、ユミア周りのストーリー展開についてです。


ある程度、色々なRPGを遊んでいる人からすると、彼女の母親についての話は、「ははーん、そういうことだな?」と勝手に想像したりすると思うのですが、最終的な話の結末が予想していたものと全然違って驚いてしまいました。

でも、不思議とエンディングの形に悪印象はなく、作品としては上手くまとめた印象で、それも含めて新しい形、と納得はできましたね。

気合の入った戦闘曲

最近、曲の方向性が変わってしまってパンチが弱くなってしまったアトリエサウンド。本作もフィールド周りはとにかく静かで眠くなるようなサウンドばかりで、耳にも残らないし、あまり語ることがないのですが、戦闘曲は結構頑張っていたのではないかなと。

各地方ごとに1曲ずつ、計4曲の通常戦闘曲。ヴィランごとに固有のボス戦曲が5曲前後あるので、トータルバトル曲が10曲超あり、なかなかリッチ。作曲者に関しては、全体的に柳川氏の奮闘っぷりが際立っていた印象です。実際耳に残ったのは全て彼が作った曲でした。

チュートリアルでも流れる通常戦闘曲「翠雨」はナイロンギターとヴァイオリンの美しい音色がすぐに違いを感じさせてくれますし、演出と併せて盛り上がるボス戦の「叢雨」のサビも素晴らしい出来。ラスボス戦2曲もそれぞれ雰囲気違って、しっかり熱い。

ここ10年くらいアトリエのサウンドずっと追ってきましたが、変わりないクオリティで出し続けてくれるのはこの人だけなので、さすがとしか言いようがないですね。

 

この人に戦闘曲作らせなかったライザ1,2はほんとに謎。

 

気になった点

既視感の強く、印象の薄いメインストーリー

メインストーリーに関しては、前述したとおり部分的に良い点はあったと思います。だけど、トータルで判断した時に、どうしても気になってしまう所もありました。それは強烈な既視感です。


失われた過去の文明の遺跡探索、鍵を握る大昔の錬金術師、過去に残された謎を解くための冒険。それ前作でも同じことやってなかった?と思わず突っ込みたくなってしまうくらい、同じような要素ばかりで新鮮味が薄い。せっかくの禁忌となった錬金術、という設定も序盤くらいしか活きていないので、もう少しユミアの錬金術で人々が変わっていく姿、とかを丁寧に描いたほうが新鮮味があったと思います。

 


本作の特徴である悪役、ヴィランにしても、思ったほど濃い描写でもなく、決着のつけ方もいまいちなので、期待外れでした。わざわざ推すくらいであれば、もう少し因縁ある、ドラマチックな展開を混ぜても良かったのではないかと。

メインキャラクターに関しても、意図的になのかはわかりませんが、癖のある描写が少なく、まじめなキャラばかりで印象に残りにくかったです。決して嫌いではないけど、そこまで好きになれるシーンが少ない。

唯一ユミアに関しては、キャラデザから彷彿するキャラクター性と少しイメージが違っていて面白く感じたんですけどね。そういうキャラクターの面白さというか、ギャップをもう少し見せてほしかった。レイニャのアドベント時のキャラクターとか本編に組み込めなかったのかな…。

一人くらい、錬金術に悪印象を持っているキャラが仲間とかのほうが、ドラマがあって面白かったかも。

 

低すぎる難易度によって魅力を引き出せていない戦闘面

戦闘に関しても、良いところがあげた通り、単体としては次第点の出来だったと思っているのですが、明確な欠点が存在していました。本作、難易度が低すぎます。

と、いうのもレベルが異様なほど簡単に上がってしまうため、探索メインの進め方をしていると、あっという間にレベルがカンストしてしまうのです。ぼくは最終エリアに入る前にはカンストしてしまいました。

雑魚戦闘は敵が柔らかすぎてほぼ瞬殺。ボス戦もアイテム装備をしっかり作っているとノーマルでは相手にならないくらい。あまりのやり応えの無さに途中から最高難易度に切り替えたのですが、それでもぬるかったので、本作は相当簡単にしよう、というデザインで作っているのかと思いました。

でも、そのデザインによって結果的に戦闘はただボタン連打ゲーという、前作と同じ体験にとどまってしまうという何とも皮肉な結果となってしまっているのですが。せっかくの回避やガードでの駆け引きも、難易度がしっかりしていればもう少し活きただろうなと。

物足りない調合システム

調合システム周りもいまいちだったのかなという印象です。色々変えてみよう、という意思は伝わってくるんだけど、うまくまとめ切れなかった、そんなイメージ。

釜を使わないシステムは別にいいと思うし、色々なアイテムを入れて属性共鳴の範囲を拡大させていくシステムも、悪くはなかった。なので、調合単体としては次第点だと思います。不思議には全然及んでないけど、ライザと変わらんくらいなイメージ。


だけど、やっぱり気になったのは特性周りですかね。本作、調合とアイテム特性のシステムを分離させてしまっているんですけど、これがどうにもしっくりこなかった。やっぱりアトリエと言えば、大きな破壊力とか、ゴッドスローとか、アイテムに強力な特性を付加させていくのも調合の魅力の一つだと思っているんですけど、本作、これが調合では出来ません。

特性を付けるためには特性結晶という、素材とは別のアイテムを使って作ったものをアイテムにつける、という作業が必要になっています。これが全然好きになれなかった。

一括で作れるところをわざわざ分離させたせいで手間が増えていますし、直感性も薄れているので、良さが感じられませんでした。シンプルに良い素材を集めて、良いアイテムを作る、その流れで完成していたんじゃないかと。わざわざ崩さんでも、というのが正直な感想です。

キャラクターイベントが少ない

サブイベントも不満が多いです。オープンワールドをがっつり作ったところで力尽きたのか、明らかにキャラクターイベントが少ない。

パーティーキャラクターのイベントはかろうじて残っている者の、それ以外の主要キャラクターとのイベントはほぼなし。と、いうか主要キャラクターが全然いません。パーティー以外だと団長くらいしかいないので、イベントがそもそも少ないのですよね。だからこそ、余計にキャラクター像を掴める機会が少なく、前述した不満にも繋がっています。

探索要素自体は面白かったのですが、そこに比重をおいたあまり、キャラクターゲームとしてのアトリエの魅力が薄れているようにも感じました。

まとめ

と、こんな感じですかね。まあまあ、というのが個人的心象です。巷の評判は悪いのかなと思うし、その評判も理解はできるけど、そこまで嫌いではない、という感じの作品。

ゲーム体験周りは迷走している部分もあるけれど、前作に比べて前に進もうとしている意欲は多少感じられたので、探索面の部分は好意的に評価したいです。他の部分で力尽きているのは、もうこの規模のタイトルでは仕方ないのかと、半ば諦め気味。

惜しいのは前述した通り、ストーリー部分ですね。ここがもう少し素晴らしい出来であれば、もっと評価できた作品だと思っています。ビターな展開やRPG的な演出に可能性は感じたんですけど、本格的な内容として見せるには色々足りてない部分が多かった。悪い意味で、あっさりしすぎなんですよね。

もし、次回作があるのであれば、そこらへんを強化したうえで、本格RPG路線のアトリエとして遊んでみたいです。過去の遺跡巡りはもう飽きたので、ちょっと違う舞台で見たいけど。